中山七里『おやすみラフマニノフ』(宝島社)レビュー

本日のエピグラフ

 それってガチガチの運命論じゃないだろうか――でも、選ばれる人間はいずれ選ばれる、という言葉は不思議に腑に落ちた。(p.183)

おやすみラフマニノフ (『このミス』大賞シリーズ)

おやすみラフマニノフ (『このミス』大賞シリーズ)



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル40


 受賞後第一作目のハードルは十分にクリアー。ミステリ的要素を外枠に、青春小説と音楽小説の二兎を追って、上滑りしていない。劇画的展開にケレン味を仕込んだ感のあるデビュー作とはまた違って、本筋に対してのサブエピソードの盛り込み方に、作者の自負があるのだろう。