牧薩次『郷愁という名の密室』(小学館)レビュー

郷愁という名の密室

郷愁という名の密室



 あとがき(辻真先のほうの)に、凄みを感じますね。こういう苛烈な経験があるひとが、戦後のサブカルを支えたんですよね。SF的設定を導入したのは、本格ミステリ的興趣のほかに、「郷愁」なるものに対する一様でない思いを表象するため、と感じなくもない。最後の逆転劇に至るまで、本格のおいしいとこ一気取り。