2010年下半期本格ミステリベスト5

 今年もやっぱり、下半期2010年5月〜10月に力作が集中しました。こういうのを、あまり構造的なことにされても…………。今年度は、新人の意欲作が、本格フィールドを救った感がある。


ボディ・メッセージ

ボディ・メッセージ



第1位:安萬純一『ボディ・メッセージ』
 賛否はだいたい4:6の割合かしらん。小説における知的センスを感じさせるのが、何より。今後も人を食ったような路線で、仕事を進めてほしいな。


隻眼の少女

隻眼の少女



第2位:麻耶雄嵩『隻眼の少女』
 おめでとうございます。作者のもののなかでも、オーソドックスな部類に入るのかなあ。麻耶雄嵩作品における“父”の存在については、論ぜられるべき課題なのだろう。


琅邪の鬼 (講談社ノベルス)

琅邪の鬼 (講談社ノベルス)



第3位:丸山天寿『琅邪の鬼』
 ベストテンでは見事にスルー。ていうか、こういう力作が評価されないのは、メフィスト賞自体がネグられているってことかしらん。読み逃すことがなきよう。


死闘館 (我が血を嗣ぐもの) (ミステリ・フロンティア)

死闘館 (我が血を嗣ぐもの) (ミステリ・フロンティア)



第3位:伯方雪日『死闘館  我が血を嗣ぐもの』
 ベストテンでは見事にスルー。ていうか、こういう力作が評価されないのは、本格の住人は格闘技ネタがお嫌いなのかしらん。でも、そういう話しているひと結構いるのに。作者は、麻耶雄嵩なみに寡作のひとだよ。読み逃すことがなきよう。


写楽 閉じた国の幻

写楽 閉じた国の幻



別格:島田荘司『写楽 閉じた国の幻』
 誰も話題にしてないけれども、島荘作品の『このミス』ベストテン入りは、実に19年ぶりで、自己最高位更新。まあ『このミス』の一部評論家たちとのインネンを考えると、感慨深いものがありますな。本作は、歴史ディテクティブの枠組みを超えて、ポストコロニアリズム小説にまで届く射程を獲得した。奇想は、権力の裏側をよく照射するだろうか。