貴志祐介『鍵のかかった部屋』(角川書店)レビュー

本日のエピグラフ

 「(…)しかし、あまりにも論理一辺倒の思考には弱点もあるんです」/(…)/「いったん犯人が発想した地点に立つことができれば、後から思考の筋道を辿っていくのも容易だということです。(…)」(「鍵のかかった部屋」p.152)

鍵のかかった部屋

鍵のかかった部屋



ミステリアス10
クロバット10
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション10
トータル47


 夾雑物を排して、密室解明のやりとりだけなのに、きちんと“小説”になっているんだもん。キャラ設定のお約束だけがすべて、といったもんとは雲泥の差。仮説提示とその放棄の手付きが、もったいぶってない、どころか薄皮をむくように真相にせまっていくスリルを存分に味わえる。「密室劇場」は、前作同様パロディだけれども、トリック自体に妙なリアリティを与えているのに成功している。これもまた“小説”力の賜物。