麻耶雄嵩『メルカトルかく語りき』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ

 「さあね。創造するのは犯人の役目だ。私はそれを楽しみながら腑分けするのが趣味だからね」(「死人を起こす」p.42)

メルカトルかく語りき (講談社ノベルス)

メルカトルかく語りき (講談社ノベルス)



ミステリアス
クロバット10
サスペンス
アレゴリカル10
インプレッション
トータル45


 「犯人」が「創造」する者なら、まさに“神”の如きもの、ということになる。神の如き、という枕詞は、探偵の名推理に被せられるものではなく、「犯人」の「創造」物にこそ刮目させるために用いられるべきなのだ――というメッセージを、作者から聞きたくなるような。オーソドックスな「死人を起こす」「答えのない絵本」よりも、“神”と戯れて魯鈍者(美袋)を玩具にする「九州旅行」「収束」「密室荘」が、本連作の真髄ではないか、と。