本城雅人『シューメーカーの足音』(幻冬舎)レビュー

シューメーカーの足音

シューメーカーの足音



 スポーツミステリの作者が今回挑んだのは、なんとトラディショナルな職人の世界。品位と審美的価値観の支配する英国靴制作の独特な世界で、野心を燃やす日本人シューメーカーと、彼に対して復讐心をたぎらせる若き靴職人。求道者と俗物の二面性を、あざとさギリギリで描き切り、己の矜持をめぐっての攻防をサスペンスフルに演出。それにしても、作者は手持ちのカードが多いのか、取材意欲が人一倍旺盛なのか。