一田和樹『サイバークライム 悪意のファネル』(原書房)レビュー

サイバークライム 悪意のファネル

サイバークライム 悪意のファネル



 探偵の君島が独立する以前の話。日本の司法の限界を、易々と突破するサイバー空間上の「悪意のファネル」。それに対抗して、権力側の公安体制も質的変容を迫られる。サイバー社会でゆるやかに進行しているのは、公的なるものと社会的なるものの軋轢と、それに対して、私的領域が掘り崩されている、といった事態だろう。探偵の行動の動機が、奈辺にあるかが、本作で確かな感触としてつたわる。