松尾由美『わたしのリミット』(東京創元社)レビュー

わたしのリミット

わたしのリミット



 日常の謎系のドラマを、成長小説的範型からややずらしたところに設定する意識が、作者にはあるのだろう。カタルシスは、存在するということの固有性と関係性の交錯からやってくる。思えば、ミステリーにおける絵解きとは、事件の固有性を、関係性のその都度の結束として、描き出す行為なのだった。