香納諒一『無縁旅人』(文藝春秋)レビュー

無縁旅人

無縁旅人



 『贄の夜会』から8年ぶりのシリーズ続編ということであれば、帰ってきた、という枕詞を使いたくなるが、本作は前作と違い、正道の社会派路線だ。社会下層にいる者たちの蹉跌を見据えて描き、それゆえPR文でも訴求しづらいように見受けられるけれども、ミステリー的興味はしっかり担保されているので、納得できる出来映え。