大門剛明『獄の棘』(KADOKAWA)レビュー

獄の棘 (単行本)

獄の棘 (単行本)



 刑務所内部という特殊な領域で起こる事件を描いた連作短編集。囚人と刑務官の織り成す小社会の諍いと欺瞞は、しばし外部とも連関するが、その滑稽さと悲哀を、ギミックに絡めて演出した。必要以上に生臭くないのは、主人公の設定よりも、作者の意識が個々の人物の格率にスポットライトを当てることに注がれているせいだろう。