天祢涼『もう教祖しかない! 』(双葉社)レビュー

もう教祖しかない!

もう教祖しかない!



 宗教ビジネスを扱った作品は数多あるけれども、本作はエコノミーの一形態として、それを認めよ、と主張をあからさまにしているようにも見える。信者獲得をめぐる奇妙なゲームは、様々な思惑を孕み、最終的に勝負が決したと思しきあとも、波乱が待ち受けるが、現代社会の袋小路を突破しようとする戦略が、トリッキーなほど周到であるのは、“敵”の強かさの裏返しで、それだけ叛乱と抵抗の困難性を表してもいるのだろう。