山本巧次『開化鐵道探偵』(東京創元社)レビュー

開化鐵道探偵 (ミステリ・フロンティア)

開化鐵道探偵 (ミステリ・フロンティア)



 このひとはこのミス大賞出身なのね。文庫デビューだとついノーマークになるけれども、本作は近代初期の鉄道建設をめぐる物騒な陰謀を、物々しくない平明な語り口で描いて、否応なく物語世界に引き込まれる。作者の前作も読んでみようという気になった。近世の残滓を引き摺りながらの近代の興隆のパトスを点描していて興味深いが、サスペンスフルでもないのが、やや物足りない点かな。