今村昌弘 『屍人荘の殺人 』(東京創元社)レビュー

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人



 乱歩賞、横溝賞ともに正賞なし、の新人賞不作の年を埋め合わすような持ち重りのある作品ではないが、B級ホラーの世界で本格ミステリを展開させた意欲は頼もしい。もうちょっとホラー作品の薀蓄はあっていいし、ゾンビホラーにあらまほしき生理的感覚に訴えるような恐怖感もほしかった。選評を読む限り、他の候補作に新鮮味がさほどなさそうなのが勝因だろうが、まあ正しい選択ではあったのだろうな。