藤崎翔『指名手配作家』(双葉社)レビュー


指名手配作家

指名手配作家


 ハイスミス的皮肉な展開が主軸だけれども、シリアスな傾斜を見せるより、主人公たちの欺瞞が、小市民的な空気感を漂わせていて、のっぴきならない状況を都合よく乗り切るような展開が、将来の破局を感じさせるよりも、むしろ主人公たちの逆境に対する底力を見せつけられている気分になる。小悪ゆえの共感性を、うまく処理した印象。