本日のエピグラフ
(前略)きみにだけしか体験できない妄想――すなわち、ある種の神経症と断定する方が世界は安定する。(P163より)
- 作者: 秋月涼介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/02/07
- メディア: 新書
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ミステリアス | 8 |
アクロバット | 8 |
サスペンス | 9 |
アレゴリカル | 8 |
インプレッション | 8 |
トータル | 41 |
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収拾つきそうもないような話を、ギリギリのところで、巧くロジカルに収斂させた。物語の展開に拡がりは見られないけれども、各キャラクターの“症状”がそれぞれひとつの“世界観”として提示されているので、そのそれぞれが軋轢を起こす様が、面白い。小説は三人称ではなく、「異邦人」の一人称で語られるので、読者はかろうじて「症例蒐集家」と立場を同じくすることから逃れられる。…………「探偵」が<読者>と同致されるのならば、逆に、<読者>という存在が「探偵」の存在を担保していると言えるのかもしれない。<読者>がいる限り「探偵」は死なない。むしろ、<読者>の“視線”は、探偵小説空間内部に、「探偵」を自在に転移させるのだろう。