米澤穂信『ボトルネッグ』(新潮社)レビュー

ボトルネック

ボトルネック


 
ミステリアス8 
クロバット8 
サスペンス7 
アレゴリカル8 
インプレッション8 
トータル39  


 「きみとぼく」のセカイ系を宙吊りにする戦略として、乙一は『銃チョコ』で真正面からエディプスの三角形を導入したけれど、米澤穂信の場合、なんと「きみとぼく」のセカイを更に可能世界で分割して、「ぼくとぼく」のセカイの拮抗としてそれを企んだわけであった。<私>の本質をなす、「根源的偶有性」=「<他>でありえたかもしれない」性が、主人公の「ぼく」世界において不審死を遂げたガールフレンドのキャラクター、即ち「きみ」に投影されているのは、周到な仕掛けで、ブラボー。