北森鴻『親不孝通りラプソティー』(実業之日本社)レビュー

親不孝通りラプソディー

親不孝通りラプソディー


 
 何やらこのところ80年代プレイバックの風潮がメディアを通じて強まっているが、何のことはない、バブルアゲイン幻想で、格差社会というウザいパースペクティヴをふっ飛ばしたいだけの話である。堀井憲一郎が『若者殺しの時代』で「若者」が“消費”に動員された状況を詳らかにしたけれども、今度“消費”に動員されるのは、団塊年金生活者ということになるんだろうか。それともまた「若者」か、あるいは当時「若者」だった40歳代が二重にカモられる? …………本作は1985年、バブル前夜の円高不況の只中で、“下流”高校生が一億二千万を強奪することから始まる珍騒動。赤川次郎北条司など出てくる固有名詞からして作者が目指そうとするのがどこにあるのは明らかで、キャラクター立ちまくりの痛快青春小説。これ読んでから、前作『親不孝通りディテクティヴ』を読み直しましょう。