北森鴻『暁の密使』(小学館)レビュー

暁の密使

暁の密使


 
 遅ればせながら読了。「グレート・ゲーム」という虚々実々の駆け引きと闘争を背景に、己の仏道がため、原典に相見えようと決死行に邁進する仏僧が陥る悲劇。エスピオナージェに伝奇小説的要素を絡めた力作だけれども、終末でバクロされる日露戦争の真相には、探偵小説作家の意地を見る。