セオドア・ロスコー『死の相続』(原書房)レビュー

死の相続 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

死の相続 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)


 

 翻訳ものは老後の愉しみに、という禁を破って、話題の怪作を紐解く。読後感は、ひゃっほー。…………「早すぎる埋葬」の撲滅が、生‐権力の体制の構築の一因になったわけだけれども、それ以前の“王”による権力体制のもとでは、「早すぎ」ようがいったん埋葬された「死者」を掘り起こすのは厳重に禁じられていた。“王”の権力は、公開処刑などに見られるように、“死”を強制することに行使されるが、「生‐権力」のもとでは“死”が剥奪され――即ち「死なせない」、“生”を強制することに権力は作動する。――それでは、「棺」に「杭を打ち込む」とは、いかなる意味を有しているのか? ――ということを思えば、いやはや結構かっちりとプロットは作りこまれておりますですよ。なんやかんや言っても、ゾンビ復活のシーンはチビリそうになるし。