倉阪鬼一郎『騙し絵の館』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ

 (前略)ほかの人々はすべて仮面を脱いでしまった。/だが、自分だけは脱ぐことができない。(後略)(P86より)

騙し絵の館 (創元クライム・クラブ)

騙し絵の館 (創元クライム・クラブ)


 
ミステリアス9 
クロバット9 
サスペンス8 
アレゴリカル8 
インプレッション8 
トータル42  


 冒頭からたちまち小説世界へ没頭できました。風格ですね。ゴシック・ロマンの雰囲気を濃厚に漂わせつつ、物語の構図を徐々に反転させていく。美‐醜をめぐる心理サスペンスとしても周到で、やっぱり“美”というテーマは、ある種のイノセンスをめぐる屈託なのであるのだなあ、と再認。