祐光正『浅草色つき不良少年団』(文藝春秋)レビュー

本日のエピグラフ

 しかし、今度は「弔う」ということはどんなことなのかということが分からない。/(中略)/その人がこの世に確かに生きていたのだと憶えていて、そんな街や、そんな時代があったのだと憶えていて、出来うる限り、世に伝えることじゃねえのか(後略)(「二つの墓」P308より)

浅草色つき不良少年団

浅草色つき不良少年団


 
ミステリアス8 
クロバット8 
サスペンス8 
アレゴリカル8 
インプレッション9 
トータル41  


 乱歩的モダニズムとIWGP的ノリの接合、と思いきや、掉尾を飾る「二つの墓」で、“物語”の必然性、そのパトスのありようが明らかになる。というか、浅草にカラーギャングという設定の勝利ですな。探偵小説的には、消失モノ「瓶詰少女」がトリックの定型をなぞっているとはいえ、面白い。二話目の変身テーマにも興味をそそられるけれども、漢字が拾えない。朱川湊人、門井慶喜に続き、復調しはじめたオール讀物推理小説新人賞出身の有望株。