海野碧『水上のパッサカリア』(光文社)レビュー

水上のパッサカリア

水上のパッサカリア


 


 某評論家が、主人公のことを女性から見た男性像だと言っていたけれども、饒舌な文体が、韜晦と自己冷笑のレトリシズムになっていなくて、基本的には生真面目でストレートな自己表出になっているのが遠因かも。でも、充分魅力的なキャラクターだし、犯罪小説のプロットがラブストーリーの要素をさらに彫琢させている点で、十二分に新人離れしていると思う。