西澤保彦『収穫祭』(幻冬舎)レビュー

本日のエピグラフ

 自分が蒔いた種が芽吹き、そして育ってゆく実感にひたりながら。着実に収穫のときが迫ってきている、その悦楽にうち震えながら。(P604より)

収穫祭

収穫祭


 
ミステリアス9 
クロバット9 
サスペンス10 
アレゴリカル9 
インプレッション9 
トータル46  


 作者の追究してきたテーマの総決算的な作品? いずれにせよ、『依存』におけるあのデモーニッシュなクライマックスシーンの、そこに孕まれた毒を、最も凶悪なかたちで全面的に展開させたものであると言えると思う。ジャンルとしてはサイコスリラー(天童荒太『家族狩り』もびっくりの!)と分類するのが適当だろうが、ロジックの行使にこの作者ならではの<本格>スピリットが充分に窺われる。にしても、殺戮が“蕩尽”の如く見えてきてしまうのは、いやはや。性的場面の散りばめ方が、効果的に機能しているのは言うまでもなく。