内藤朝雄『の時代』(柏書房)レビュー

“いじめ学”の時代

“いじめ学”の時代



 
『いじめの社会理論』のエッセンスを凝縮して「高校生でも中学生でも読める」かたちに仕上げたのが本著。でも、なんといっても、本書最大の読みどころは、著者の高校時代の「管理教育」体験ですな。といっても、知っているひとは知っているんだけれども、私がいちばん感じ入ってしまったのは、林間学校の場面ですよ。『滝山コミューン一九七四』でも、「林間学校」で異様な光景が繰り広げられたけれども、“教育”屋たちは一体全体「林間学校」で何を企んでいるんだ?(笑) 著者が創り出したパースペクティブ中間集団全体主義」は、いまや、<いじめ>問題を語るときに欠かせぬものとなった。この遠近法で、わが国における左右両極はラディカルに相対化される。当時の教師との対談で、当時の教頭が“転び”アカだったことが明かされるが、以て察すべし、というところだろう。にしても、内藤朝雄島田荘司と対談させたいなあ。