山口隆『叱り叱られ』(幻冬舎) レビュー

叱り叱られ

叱り叱られ



 森山裕之時代の『QJ』に掲載された山達・大瀧・岡林との対談に、あらたに、かまやつ・佐野・奥田との対談を加えた、この国の“音楽”の来歴をめぐるダイアローグ。「断絶」をなくそうと意気込む山口の語り口が、生ける音楽史の様々な場面を引き出すのに、絶妙な効果を上げている。山口ってひとは、不器用無骨なフリして、断片的に紡ぐコトバの回し方が、上手いこと巧いこと。このすごさは、対大瀧詠一でのトークと、何よりもそれぞれの「偉人」たちのイントロダクションをはじめとする各文章で披露されている。“自分”の卑小さへの内省と“他者”へのリスペクトが、揺るぎなく繋がっているのが、このひとの強みだ。終わっちゃったFMの番組の最後のコーナーのモノローグなんて、毎週ゾクゾクしたもの。また、どこかの地上波で始まってくれないかなあ。地上波、ね。