2008年上半期本格ミステリベスト5

 毎度毎度のことながら、読み残し多々あれど、いつの間にやら七夕さま直前、2007年11月〜2008年4月の傑作秀作を、夏休み前にチェック。今年度の上半期は、ある意味野心的な試みが目立ちました。

君の望む死に方 (ノン・ノベル)

君の望む死に方 (ノン・ノベル)



第1位:石持浅海『君の望む死に方』
“闘争”としての探偵小説。果たして、この物語空間内で、優位に立っているのは誰か。作者の知的企みと挑発はなかなかのもので、今最も脂の乗った活躍をしている人ならではのアグレッシブなスタンスを感じさせる。


芝浜謎噺―神田紅梅亭寄席物帳 (ミステリー・リーグ)

芝浜謎噺―神田紅梅亭寄席物帳 (ミステリー・リーグ)



第2位:愛川晶『芝浜謎噺』
 落語ミステリというより、ここはちゃんと芸術ミステリとして捉えるべきではありますまいか。ミステリアスな要素が、過去と現在、噺と現実を交差させるものとして、小説に吸引力を持たせている。


山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)

山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)



第3位:三津田信三『山魔の如き嗤うもの』
 現在の本格シーンのトップシリーズ、期待にまた応えてくれる。読者は多数獲得したと思うので、また『厭魅』のような濃密な文体に還ってほしいなあ。


モンスターズ

モンスターズ



第4位:山口雅也『モンスターズ』
 “不気味なもの”をめぐる寓話。作者の懐の広さをあらためて思い知る。にしても、山口の作品集がたてつづけに出るとは、上半期はこれだけでも濃かった印象がある。


少女ノイズ

少女ノイズ



第5位:三雲岳斗『少女ノイズ』
 今回の奇想系。んだけども、ダヴィンチものといい、作者の本格作品は無視されやすいね。この作品も『GOTH』と雰囲気がアレだから、結構不利になりやすいかも。


裁判員法廷

裁判員法廷



番外:芦辺拓『裁判員法廷』
 やはり、旬、ということで。しかし、この国のリベラル系法律家たちは、パンピーの知的レベルを、どんだけ高く見積もっていたんだ(笑)。国家と大衆は意識レベルで対立するものだという、カビが生えてボロボロになった世界観をもってらっしゃる方が、まだおられるのだね。南〜無。