本格ミステリ作家クラブ・編『本格ミステリ08』(講談社ノベルズ)レビュー



 いくぜ。「はだしの親父」日常のちょっといい謎の話/「ギリシャ羊の秘密」言葉あそび/「殺人現場では靴をお脱ぎください」上手い巧い。論理の筋運びがスマート/「ウォール・ウィスパー」今回は科学トリックがミステリの結構とうまく噛み合ったかな/「霧の巨塔」バカというより奇想の閾に達しているトリック。まあ、シュールではあるけれども/「奇偶論」小品だけれども、上手くまとめていることは間違いなく/「身内に不幸がありまして」まあ、こういうのは最後の一撃というのからはちょっとズレていると思いますが/「四枚のカード」集中のベスト/「見えないダイイングメッセージ」これは論理展開が苦しい。アイデアの実現不可能性をもっと潰しておくべき/「自生する知と自壊する謎――森博嗣論」いたずらな引用が却ってテクストを軽く見せているというのは、手癖だと思えどやっぱり著者にとって不幸なような気が。いずれにせよ、現在の本格シーンの“問題”性を構成しているのは、あきらかに石持浅海道尾秀介三津田信三らであって、著者が90年代後半からゼロ年代前半の総括を行っているのか、状況認識がズレているのか、判然としないんだけれども。