ジョセフ・E・スティグリッツ『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』(徳間書店)レビュー

世界を不幸にするアメリカの戦争経済  イラク戦費3兆ドルの衝撃

世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃



 スティグリッツせんせい怒りのリアルバウト、VSイラク戦争不正会計。各紙誌の書評は、概ね腰が引けているもの――ていうか、グリーンスパンさんって、ホントに怖いひとなんですねえ。マネーが供給されなきゃ、戦争なんてできないもんでしょうに。にしても、「歴史的な低金利がいつまでも続くはずなどないのだ」って、あたしらどーゆー面持ちで聞いたらいいんでございましょう。スティグリッツせんせいの見積もりには、当然異論が出されているけれども、ビスマルクの昔から、現代の戦争に“国民”を動員するには、“福祉”的見返りが必須なわけで、これらコストを上回るリターンが合衆国経済を潤すんだろか、潤しているんだろうか、っていうと、という問題。軍事ケインズ主義的な乗数効果って、どれくらい効いているんでしょうか、っていう問題でもあり。まあ、リベラル・デモクラシー体制下では、(独裁体制と比べると)“コスト”自体が多く見積もられる傾向はあるんでしょうが。にしても、負傷した兵士は、なんだか、そのまま放っておかれそうな。ともあれ、これまでの対テロ戦争の総括として、虚心に読みたい。三兆ドル戦争、日本にとっちゃ三十兆円戦争。――あれ、「32兆円に及んだ円売りドル買い介入」と、平仄をあわせているような…………。