荻上チキ『ネットいじめ』(PHP新書)レビュー

ネットいじめ (PHP新書)

ネットいじめ (PHP新書)



 やっぱり、こういう本は、どこから出るのかが肝要なことだと思われ。でもなんだか、同じトコロから、本書をガン無視したような内容のものが、出そうな気が…………。学校「裏サイト」不安を煽るひとびとを一刀両断したあと、「ネットいじめ」現象を解析して、従来のいじめ現象の延長線上の問題として、対策を講じることを強調する。今までの“いじめ”研究と比べた際の本書のアドバンテージは、「キャラ戦争」というパースペクティブを導入したことだろう。まさにスキゾ・キッズを地でいった事態で、日常的なコミュニケーションにも一種のセンス・エリーティズムが支配してきたともいえるわけで、この状況はこれからのウェブ・デザインの如何によっては変化するかもしれないけれども、ある関係性の切断が、実はまた別の関係性への接続によって担保されている以上、「キャラ戦争」と当面つきあっていくしかないと思うのだけれども。