詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ


「一応、ここから先の推理も考えてきたんですけど……聞いて貰えます?」/「どうせ妄想だろう」/「そいつを売ってんです。(…)」(P237より)

遠海事件

遠海事件


 
ミステリアス
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インプレッション
トータル43


 いやー、これで帯コピーに上遠野浩平の推薦文があれば、プロデュース的に完璧だったように思うのですが。ロゴスとパトス、シリアスとシニックな価値観の不分明さが、クリアカットな“物語”を切望させる。本作にめぐらされた深謀遠慮は、それに抗っていることは明白で、それが作品のメタ構造を召喚させる。ここでは、本格ミステリ的興趣と小説的カタルシスが奇妙な同居をしているのだ。