長岡弘樹『傍聞き』(双葉社)レビュー

傍聞き

傍聞き



 冒頭の一編は更生保護施設長だが、それも含め、セキュリティにかかわる職に奉ずる者たちの特別な事件を描いた佳品集。落ち着いた筆致と巧みなプロットで、間然するところない。とくに掉尾を飾る「迷走」は、現在的問題を導入しながら、ミスディレクションを効果的に用いて、職責という矜持を描ききった傑作。