七河迦南『七つの海を照らす星』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ

 「海王さんはね、よく『真実っていうのは人を幸せにするものだ』って言うの。『真実と事実は違う』とも。(…)」(「第六話 暗闇の天使」P253より)

七つの海を照らす星

七つの海を照らす星


 
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 子どもたちをめぐる“暴力”に焦点をあてる姿勢は一貫しており、そこが従来の日常の謎ものとは一線を画す。性善説ファンタジーから免れ、現代ミステリとしての射程も確保しているけれど、さすがに現在は、連作短編集的長編小説という結構は凡庸になってきた。小説の構成のアクロバットという点において、なんらかの新機軸を打ち出さないと、一級の印象を与えにくいのではないか。