奥田英朗『オリンピックの身代金』(角川書店) レビュー

オリンピックの身代金

オリンピックの身代金



 1960年代半ば、「理想の時代」の末期の熱狂の世相を詳らかにしながら、高度成長時代の稗史をある種のパトスのうちに描こうとするのが、作者のねらいだろう。ある時代精神が、来るべき時代の無意識によって、薄情に葬り去られるが、やや図式的なきらいがあるのは否めないか。