篠田節子『仮想儀礼 上・下』(新潮社)レビュー

仮想儀礼〈上〉

仮想儀礼〈上〉

仮想儀礼〈下〉

仮想儀礼〈下〉



 宗教ビジネス、とはまさしく“宗教”へのアイロニカルなコミットにほかならないだろう。まさにそれが宗教性を呼び込むということで、ネタからベタへ、消費社会的アイロニズムからロマン主義シニシズムへの精神史と同型の構造を作者は採用しているが、時代精神の剔抉という意味合いで作者の深意を見るならば、皆川博子的というよりかは、松本清張的アプローチを取ったというべきだろう。タイトルも、いかにも、って感じだし。作中に、かなりきわどいネタが埋め込まれているのにも要注意。