いしいしんじ『四とそれ以上の国』(文藝春秋)レビュー

四とそれ以上の国

四とそれ以上の国



 四国、といったら坂東真砂子っていうのはどれくらいの人が覚えているのかなあ。本作は、無論それとはなんの関係もなく、比較されるべきは古川日出男『聖家族』でしょうね。作者が本格的にマジックリアリズムに踏み出した作品として位置づけられるだろう。さまざまな相を見せる「四国」を、閉域というよりかはアモルファスな小宇宙として描き出している。