坂木司『短劇』(光文社)レビュー

短劇

短劇



 素っ気ないタイトルのショートショート集だけれども、二十六編の収録作のほとんどがアタリという快著。本書をもって作者が“奇妙な味”系の作風へ転向するとしてもおかしくないくらいだ。今までの作風の反動と揶揄されるかもしれないが、それが適当でないのは、各話に凝らされたツイストもさることながら、人間の悪意と残酷さと道化ぶりを扱う手つきが、掌編という形式で、より洗練されているからである。