石持浅海『まっすぐ進め』(講談社)レビュー

まっすぐ進め

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トータル36


 作者独自の論理的展開には、ある種の違和感が表明されてきた。私は、作者が確信犯でやっていると思っているが、作者の追求している“逆説”に、同業者やジャンル読者からそのリアリティを難詰されるという事態は、作者自身も実は戸惑っているのではないか。ラブストーリーの体裁をとっている本作は、作者の行使する“逆説”が、“物語”といかに調和するかを探っているように思える。最終話は、探偵小説的興味が、ある意味精神分析的な“物語”に変容させられているともいえるわけで、なんだか今後の作者のシュールな展開を、暗示していそうで。