柄刀一『奇蹟審問官アーサー 死蝶天国(バグズ・ヘブン) 』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ

 「まさに、天が関与した、究極のスーパー探偵であったのでしょう。しかしそれは、(…)これもまた究極的に皮肉な存在ではあったのですが……」(「ACT1 バグズ・ヘブン」PP62―63より)

奇蹟審問官アーサー 死蝶天国 (講談社ノベルス)

奇蹟審問官アーサー 死蝶天国 (講談社ノベルス)


 
ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル10
インプレッション
トータル45


 物語の設定が設定だけに、“謎”の解明よりも、アレゴリカルなアプローチの深度を期待したいけれども、本作は十二分に満足。「バグズ・ヘブン」は、探偵小説を病理学と宗教的シニカルさで挟撃したような作品。「魔界への十七歩」は、舞台装置が「奇蹟」を召喚する。「聖なるアンデッド」は、ゾンビの徘徊よりも、「光」を以て「光」を征す「闇」の悪意に、思わず身悶え。