後藤均『ゴルディオンの結び目』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ

 「偽物だと思います。(…)」/(…)/「ええ。じっと絵を見つめていると、本質が見えてくるのです。(…)」(P230より)

ゴルディオンの結び目

ゴルディオンの結び目


 
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 ナチスの影がまだ淡く残る冷戦下のドイツで、諜報戦と絵画の真贋絡みの殺人劇が展開される。前作『グーテンベルクの黄昏』ほどの歴史小説的愉しみは薄いけれども、点綴される物語の背景は、十分興味をかきたててくれる。随所に探偵小説ファンに対するくすぐりもあるし。作者は寡作路線でいくのだろうけれども、このクオリティを維持してくれるなら、不満はない。