津田 光夫, 三浦 清春, 寺尾 正之, 馬場 淳『10年後、あなたは病気になると家を失う―国民皆保険崩壊の真実』(日本経済新聞出版社)レビュー

10年後、あなたは病気になると家を失う―国民皆保険崩壊の真実

10年後、あなたは病気になると家を失う―国民皆保険崩壊の真実



 四半世紀前に、ひとりの旧厚生官僚がぶちあげた「医療費亡国論」をなぞるようになされた一連の医療制度改革が、もののみごとに国民全般の生存権をおびやかしている現状を告発する。わが国の医療経済の問題について、網羅的にまとめてある点で、必読。すでに各紙誌で報道された記事などで、いくつかの重要問題については既知であると思うので、内容について検めることはしないが、それでもひとつ強く注意を喚起したいのは、件の後期高齢者医療制度に関してだ。この制度導入で、保険料が高くなった安くなったの議論はナンセンスで、なんとなれば、この制度では保険料が、全体の医療給付費の10%に設定されており、つまりは、「逆にいえば、この制度で給付されるのは、高齢者が負担できる保険料額の10倍の医療費にとどまるということになります」。即ち、保険料による負担割合を決定することにより、全体の給付に抑制がかかるシステムで、民間保険にも入っている経済力のある後期高齢者とそれ以外の者とでは、必然的に給付の格差が生じることになる。このシステムが回りはじめ、さらに混合診療が解禁されれば、医療難民が増えるのではないか。無論、医療水準を維持させるためには、国民負担率を上げなければならないし、その前に、抜本的な行財政改革により、役人の隠し資金を吐き出させるのが急務である。