原武史・編『「政治思想」の現在』(河出書房新社)レビュー

「政治思想」の現在

「政治思想」の現在



 いかにも、というような取り合わせ。収録されている文章のうちで、重要なのは、巻末の二編、北田暁大中島岳志の「ナショナリズム」をめぐる議論。とくに北田が、「下からのナショナリズム」という現象の把捉の仕方を、社会学的見地から批判していて、さらに、比較的穏健である「上からのナショナリズム」を、そのあり方として肯定的に見ることの抑圧性を指摘しているのは、「ナショナリズム」をめぐる議論の間隙を突いたものだろう。中島は、アジア主義の問題性を剔抉し、自由民権運動と密接な繋がりがあった初期右翼運動が、なぜ国権主義に転向せざるをえなかったのか、「ナショナリズム」の限界を示唆する。