綾辻行人『Another』(角川書店)レビュー

Another

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 座敷童子小説、というか『六番目の小夜子』へのオマージュというか。物語の構築性はいつも通り堅牢なものだけれども、今回はそういった作者の律儀さが、違和感として享受された。結果的に主人公の英雄譚としてまとめられるのはいいとしても、“状況”に対してのその他大勢の登場人物の無力化が、しかるべきダイナミズムを殺いでいるのではないか。作者の主眼がそこにないのではあろうが。