初野晴『千年ジュリエット』(角川書店)レビュー

千年ジュリエット

千年ジュリエット



 シリーズ第四作目は全編文化祭をフィーチャー。スラップスティックなアプローチが、狂騒的雰囲気をいやがうえにも盛り上げるけれども、作者独特の柔らかい語り口を損なっていないので読者は安心できる。中編的分量で編まれている感があって、「失踪ヘビーロッカー」の諧謔性と「決闘戯曲」の変則的なハウダニットが、ミステリーとしての高質さを担保している。