幕内秀夫『変な給食』(ブックマン社)レビュー

変な給食

変な給食



 あはは、いちばん笑えたのは、「その5 寂しい貧乏給食」。飽食の時代なんだかまだ物資が欠乏してるんだか、わからんです。要するに、主食パンにお砂糖と脂がたくさん使われるようになった結果、総カロリーの関係で、おかずにしわ寄せがきて、貧相でシュールなものになったということですわな。この意味で、主食が米飯の給食が推進されるのは、結構なことです。それと、ワタシらのときのソフトめんが、今はパスタとラーメンになっているのだなあ、と。珍給食に付せられたつっこみコメントは、ナイスなものと、味わい深いものとがありますが、著者の講演録を読むと、基本的には人がいいことは伝わってきます。ただ、アメリカの食糧戦略を認めるつもりは毛頭ないものの、パンと肉食文化が“輸入”されたことと、日本人の体格が向上したことのあいだに、相関関係を認めないわけにはいかないし、食品アレルギーをすべてアンチ米食文化に求めるのも問題ありだろうと思う*1。思わず、おいおいと言ってしまったのは、「完全米飯給食で非行ゼロ」と誇られている教育長先生のお話。あのー、非行ゼロ、学力向上の努力奮闘を、すべて完全米飯給食に還元しなくてもよろしいんじゃないか、と*2

*1:離乳食の段階の偏食に主原因がありそうなのは、本書でも示唆されているとおり。

*2:追記。まだ消化器が未発達の乳児に、消化しきれない食物を与えると、その食物が抗原性を持ったまま、体内に吸収されてしまう。だから、成長に即した、消化器または歯の発達に応じた離乳食を与えなければならない。また、母乳からも食物抗原を摂取してしまうので、授乳期の母親の食生活も医師の指導などで適切に管理されなければならないのは、周知のとおりだが、いずれにせよ、非米食文化が日本人の食物アレルギーを引き起こすと論じるのは、あきらかに短絡的で、危険だろう。