本田由紀『教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ』 (ちくま新書)レビュー

教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)

教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)



 序章の「あらかじめの反論」で、すべて言い尽くされているような気がしないでもないけれども、構成的にはこのようにするのがベストなのかな。まず喫緊の課題としては、「教育の職業的意義」における「抵抗」の知識の涵養、すなわち労働法の基礎的知識や社会保障制度等の理解を育むことで、これにはほとんどの人が異存はないだろう。問題は、肝心要の職業教育という点で、著者の主張する専門高校の増設は有効な手段かどうか。専門学科の統廃合の趨勢は、要するに教育サービスにおける需要と供給に基づいてのことだろう。資格取得を含めた職能におけるスキルアップには、教育バウチャーを無条件に発行することを前提に、官民あげてキャリアラダーの制度を構築していくしかないと思われる。