村田沙耶香『星が吸う水』(講談社)レビュー

星が吸う水

星が吸う水



 性愛を性行為に還元する視座は、たとえば富岡多恵子のように性に対する男性的幻想を剥ぎ取るのに行使されるのではなく、むしろその幻想の向こう側の“現実”を見据えようとするためにある。さらに作者が周到なのは、そのような欲望が奈辺で挫折するのかも織り込んでいることで、この企みが今後どういう展開を経るのか気になるところ。