オレ的新書大賞2010

新書大賞〈2010〉

新書大賞〈2010〉



 本屋大賞も発表されたあとで、今更この企画に便乗するのはちょっと間の抜けた感じですが、まあGWの読書ライフの一助になれば、と。昨年より、中央公論の別冊として刊行されて、今年のベスト20もまずは納得できるもの。でもやっぱり、投票者のコメントは個別的に見たいなあ。ベスト20とは別に、「私のイチオシ」コーナーを設けたのは、見識のあるところ。…………では、オレ的新書大賞をおずおずと。 

 

教育と平等―大衆教育社会はいかに生成したか (中公新書)

教育と平等―大衆教育社会はいかに生成したか (中公新書)



第1位:苅谷剛彦『教育と平等―大衆教育社会はいかに生成したか』
 「教育財政の知識社会学的研究」というコンセプトの画期性で、日本の教育における「結果の平等」性という通念が、みごとに覆されていく。「機会の平等」を達成した日本の教育財政における「知られざる革命」。この本を読まずして、教育政策を論ずることなどできないけれども、新書大賞のどこにも、永江×宮崎対談でも触れてないんだよねえ。

 

日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)



第2位:内田樹『日本辺境論』
 やっぱりこの本は外せないよねえ。決して平易でコンパクトな本ではない。むしろその対極にあるが、こういった書がベストセラーになるのは、日本の読書人層の教養の厚さがまだ崩壊していないことの証しだろう。

 

新書459吉本隆明1968 (平凡社新書)

新書459吉本隆明1968 (平凡社新書)



第3位:鹿島茂吉本隆明1968』
 おおっと、この本のエントリあげてなかったっけ。「自立」「大衆の原像」など吉本思想の重要概念がどう成立したのか、名エッセイストでもある仏文学者が、若い読者へ講義する。吉本の語る平明な真理が、異端異質とされる時代が過去にあったのだ。その亡霊は未だ徘徊している。

 

エコノミストを格付けする (文春新書)

エコノミストを格付けする (文春新書)



第4位:東谷暁『エコノミストを格付けする』
 いやー、なんだかんだいっても、現実の経済の動きには、名うての論客たちも、太刀打ちできませんな。構造改革路線のもとでのどろどろの経済論戦も、リーマンショックで、大不況入りを予測できたのとできなかったのとあっさり二分。ケインズリバイバルを探るには、小島寛之『使える!経済学の考え方―みんなをより幸せにするための論理』を参照に。

 

世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書)

世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書)



第5位:菅原琢『世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか』
 要するに、ネット上の騒がしい方々が自民党を殺したわけですね。しかし、「世論」が政局を動かしているというのは、一部の保守論者が嘲るように、民主主義が衆愚政治であるということでなくて、大手メディアが政治を動かしているってことなんであって、その「世論」調査も…………