坂木司『和菓子のアン』(光文社)レビュー

和菓子のアン

和菓子のアン



 だんだんと、北村薫より北村薫っぽく思えてくるのは、成長小説的主題を把持しているからか。ミステリ的アプローチは、あとがきで作者が触れているような和菓子業界の特殊事情を直截的に導入するような手で、全編押し通しているわけでもなく、ただ、どちらかといえばコメディタッチの処理の仕方に、軽さを覚える向きもあるかもしれない。各キャラクターのユニークさが、小説を牽引しているのも、心地よく読めるわけのひとつ。