本城雅人『W(ダブル)』(徳間書店)レビュー

W (ダブル)

W (ダブル)



 ディテールのリアリティが、スポーツ紙記者出身の作者ならではと思わせる。アメリカの競馬界の内幕と日本の競馬ビジネスの実態をバックに、日米で起こった殺人事件の焦点となるブローカーの男を陰影深く描き出した。物語はジャパンカップ本番に収斂させられるが、そこまでの展開に中だるみはない。社会派ミステリの良質な面を換骨奪胎したサスペンス。