沢村凛『タソガレ』(講談社)レビュー

タソガレ

タソガレ



 日常の謎系のありうべき方向性を模索した。それぞれが内にいる“世界”のずれが、日常における混乱と“他者”の受容、そしてそれへの希求を生み出す。ここにおいて“謎”は、“他者”への欲望が駆動する装置で、その解明は、混乱した“世界”を修復すると同時に、また“世界”像をひとつ更新する手続きなのである。恋愛小説としても、新鮮な感覚を残す佳作。